乱視

乱視が進行する原因として、一番に考えられるのは「乱視を矯正せずに放置してしまう事」。気付いた時点で眼鏡等で矯正しないと乱視自体が眼に負担をかけ、その症状を更に悪化させてしまいます。乱視の眼で物を見る時、その焦点のズレから多くの人は眼を酷使してしまいます。常に眼を細めたりする事で眼球を圧迫し、それが乱視の原因である角膜をより歪めてしまうのです。そうならないためにも出来るだけ早めに矯正する事が大切です。眼に合った乱視の矯正眼鏡をかける事で乱視がひどくなることもなく、その後の眼鏡矯正もスムーズになるからです。

角膜の歪みが原因で焦点が1つにならない

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【乱視の分類】

(Ⅰ)角膜が均一面ではなく、強く湾曲した方向と弱く湾曲した方向があって歪んでいると、赤枠で囲んだ「縦長・横長・斜めに長くなった形状」の角膜となり、これらを正乱視と呼びます。正乱視の角膜を通過する光は眼の中で2ヶ所の焦点を結びますのでレンズでの矯正が可能です。不正乱視と呼ばれる外傷などが原因で歪んでしまった角膜を通過する光は眼の中で複数の焦点を結んでしまう為にレンズでの矯正は不可能となります。

(Ⅱ)乱視の眼は、「近視だけの眼」「遠視だけの眼」とはボヤケ具合が異なって【くっきり見えている方向 / ぼやけて見えている方向】が現れるのが特徴で、近視や遠視と合わさると更に見え方は悪くなります。

乱視は近視・遠視・正視に付属する形となりますので、ひと口に乱視と言っても眼内で結ばれる焦点の位置で呼び方が変わって以下のように5つの分類に分かれます。

近視性乱視
近視の焦点が2つ
近視性単性乱視
近視の焦点と正視の焦点
遠視性乱視
遠視の焦点が2つ
遠視性単性乱視
遠視の焦点と正視の焦点
混合性乱視
近視の焦点と遠視の焦点
度数別の分類
0.00D ~ 0.50D
矯正の必要なし
0.75D ~ 1.75D
弱度乱視(1.00D以上からは矯正しないと良い視力にならない)
2.00D以上
強度乱視(必ず矯正が必要)


代表的な乱視は、「縦と横」

近視や遠視の矯正と違って乱視の矯正方法は「0° ~ 180°」のうち、いずれかの方向へ度数を入れるので乱視軸度と言われます。横カーブの強い角膜は倒乱視(とうらんし)と呼び、縦カーブの強い角膜は直乱視(ちょくらんし)と呼びます。倒乱視、直乱視ともに特徴は正反対で、縦よりも横方向がはっきり見える倒乱視に対して、直乱視は横よりも縦方向がはっきり見えます。
 
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【視力検査の乱視表は、縦方向がはっきりしない】
角膜の横方向の湾曲が強いので縦方向の湾曲が弱くなります。カーブの弱い60° ~ 120°方向が不鮮明に見えてしまうので、乱視表全体が均一の線になるよう、不鮮明に見えている方向に度数を合わせます。
【※乱視軸度を表す場合、180°以上の角度は表記しませんが、正反対側の角度として印してあるだけです。】

縦方向の乱視というのは、近くが見にくくなる眼の老化と伴って現れる事が多く、老眼の度数と相まって年々増加して行く傾向にあります。ある程度強くなった縦方向の乱視というのは、まともに実際の度数のまま装用してしまうと物が縦長に見えたり、御自身の背が高くなったような悪い装用感が発生しやすい為、「縦の乱視は半分まで」という眼鏡処方する場合のコツがあります。

 
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【500円玉の上で、-2.00Dの乱視レンズを90°方向に合わせています。】
度数の表記とはこのように表します。
spherical lens(近視/遠視の度数)Dioptre(単位)
cylindrical lens(乱視の度数)Dioptre(単位)
Axis(軸度)

このレンズは「sph±0.00D cyl-2.00D Ax90°」90度の方向に-2.00Dの度数が入っていて、水平方向は度無し(0.00D)です。500円玉が縦に長く見えます。これが装用感を悪くする原因となります。乱視を全く合わせなければ装用感は悪くなりませんが、視力も上がりませんので乱視の矯正は半分だけに留めておきます。

 
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【視力検査の乱視表は、横方向がはっきりしない】
角膜の縦方向の湾曲が強いので横方向の湾曲が弱くなります。カーブの弱い0° ~ 30°、150° ~ 180°方向が不鮮明に見えてしまうので、乱視表全体が均一の線になるよう、不鮮明に見えている方向に度数を合わせます。
【※乱視軸度を表す場合、180°以上の角度は表記しませんが、正反対側の角度として印してあるだけです。】

横方向の乱視というのは若年層に多く見られる乱視です。子供の眼鏡に初めて乱視が入る場合も十中八九、横方向です。幼少の頃から強い乱視がある場合は、大人になっても乱視の強さは殆んど変化しないという特徴がありますから、眼鏡処方をする場合は現時点で必要な分の度数を目一杯合わせても問題ありません。

 
【眼鏡装用経験は5歳から。30代女性(当店の御客様例)】
【初装用】
R)sph-1.50D cyl-1.75D Ax20°
L)sph-0.50D cyl-2.25D Ax170°
【就学時】
R)sph-2.00D cyl-2.00D Ax10°
L)sph-1.00D cyl-2.25D Ax170°
【小学校高学年】
R)sph-5.00D cyl-2.50D Ax20°
L)sph-4.00D cyl-3.00D Ax170°
【中学生】
R)sph-5.75D cyl-2.50D Ax25°
L)sph-4.00D cyl-3.00D Ax170°
【高校生】
R)sph-6.00D cyl-3.00D Ax25°
L)sph-4.25D cyl-3.00D Ax170°
矯正が必要な乱視を発見した場合は早めに対処しなければなりません。こちらの御客様の場合、身体の成長過程における近視がいちばん進行する時期を見ても分かるように、乱視(cyl)については、大人になった現在でも小学生の頃とほぼ同じ。横方向の強度乱視というのは、こういった特徴があります。近視(sph)の進行については成長期と伴うもので問題ありません。


こちらも乱視についてのページです。■「屈折異常と、その矯正 vol.3」乱視